11/24/2010

Family reunion

 いやいや、こんなことって本当にあるんやなぁ。

サムは7人兄弟の6番目で、一番下に弟がいる。上の姉、兄たちとサムはお父さんが違うのだけど、サムと弟のパトリックがハーパーさんという同じお父さんを持つ。

ところがこのハーパーさん、パトリックが生まれて一歳にならないころに別の女の人と暮らし始めたらしい。それでママのもとを離れたのだけど、サムが7歳、パトリックが8ヶ月くらいのころ、ママのいないときにやってきてサムとパトリックを連れて帰ってしまった。トリダードでの出来事なんやけど、距離にしたらブロンクスの家からハーレムの125丁目あたりくらい、京都で考えると岩倉から桂あたりになるんかなぁ、当時7歳のサムにしてみたらその距離はもう国境の外くらいの感じやなかったんやろうか。

お父さんのところに連れてこられたサムは、暗くなっても帰ってこない自分とパトリックをママがどれだけ探してるだろうか、ママのところに帰らないといけない、、ということで頭の中はいっぱいだったらしい。家までの道をどうやって探すかとか、そんなことを考えてる余裕もなく、家人がいないすきをみはからって、抜き足差し足で家からドライブウェイを通り抜けようとしたとき、家の中から8ヶ月のパトリックの火のついたような泣き声が聞こえてきて、そして振り返ったのね。

ものすごく葛藤したらしい。赤ちゃんのパトリックをどうやって連れて帰ったらいいのか、家までの道もわからないし、ミルクやおむつもどうしたらいいのかわからない。ママはパトリックをつれて帰らなかった自分を怒るだろうけれど、とりあえずは自分だけでもママのところに帰らないと、、と。


通りをでて、お父さんの家を振り返って、「お父さんのところに戻るのなら今しかない、ママのところに帰るのも今しかない」という思いがよぎったことを、今でも鮮明に覚えている、と言ってた。

ママのところまで、どうやってたどり着いたのかわからないけれど、街なかを7歳の男の子が泣きながら歩いているのを、知り合いがみつけたらしくて、ママのところまでつれて帰ってくれたそうだ。

そうやって弟と別れて、50年以上がすぎた。

サムが30歳をすぎたころ、お父さんのハーパーさんも、トリニダードからアメリカに来て、ニュージャージにいることを聞いて、小さかった娘を連れてたずねたことがあったらしい。2番目の娘のエリカが生まれたあとって言ってたから、25年ほど前のことかなぁ。30歳を超えた息子が孫をつれて突然目の前に現れたことに、ハーパーさんはショック状態だったらしく、口をついて出てきた言葉が「W,,What do you want!」だったんだって。

お父さんの言葉にひどく落胆したサムは、それ以来、お父さんを探そうともしなかったし、会いにいこうとしなかったけど、パトリックのことはいつも気がかりだった。赤ちゃんだった弟を置いて、自分だけがママのところに戻ってきたことが、いつも心の隅っこに、罪悪感というラベルがついて根をおろしていたみたいで、私と二人のとき、家族のことが話題になるといつもパトリックのことを話してくれていた。

今年の3月に脳梗塞で倒れたママは、ニューヨークに戻ってきてから、なぜか確信めいた口調で「Before I drop dead, I'm gonna see my Patrick」と言っていた。

それがなんと、本当のことになった!!!

今月に入って、トリニダードにいるサムの姪っ子のシェリルから連絡があって、パトリックを見つけたというのだ。それもなんと、Facebookで!

パトリックと同じ学校に通っていたシェリルは、彼が自分の叔父さんにあたるということをなんとなく知っていたらしい。どういう経緯なのかわからないけど、Facebook上で昔の友だちをたどっていたところ、パトリックに行き当たったらしい。それで、いろいろと尋ねてみて、それが自分の2歳違いの叔父さんだということがわかって、パトリックもシェリルといろいろと話して、ママやサムがいまでも自分のことを会いたいと探していたことを知ったのだ。

今はロサンジェルスに住んでいる彼は、さっそくこのサンクスギビングのホリデーにニューヨークにやってきた。驚くことにサムのお父さんも、今93歳で健在、ニュージャージで不動産業を現役で営んでいる。余談だけど、93歳のハーパーさんは奥さんと別に彼女が二人もいて、別々に住まわせているのだそう。いやあ、遺伝子はしっかりと受け継がれてますなぁ、と感心したもんです。

ということで昨夜は、ニュージャージのサムのお姉さんのシンシアの家で、家族の再会となったわけです。

ママにはパトリックのことを話していたのだけど、記憶がはっきりしているときと、どっかにいっちゃうときがあるので、いまいち、昨日がパトリックが来ている日だということは、ママのなかでははっきりしていなかったみたい。

赤ちゃんのときに手放さざるを得なかったパトリックと、昨日、会うことができて、目の前にたっているのが、末息子のパトリックだとわかったとき、ママの顔が、ほんとに文字通り、ぱっと明るくなった。

パトリックとの再会に、その場にいた皆の気持ちは嬉しさがいっぱいで、ぜんぜん湿っぽいものにはならなかった。パトリックの人柄もあるのだろう。赤ん坊のときに離れたとは思えないくらい、再会のその瞬間から彼は家族の一員だった。

私も一目パトリックをみた瞬間、彼の目というのか、皮膚というのか、そういうのがサムと同じものを持っているのがわかった。姿かたちが似てるとか似てないとかじゃなくて、「あ、これは同じもんだ」と伝わってきた。

これと同じ感覚を味わったことがあったこともついでによみがえってきた。
25ほど年前、ハンメの弟がまだ健在だということがわかって、彼が死ぬ前に日本にいる家族に会いたいと連絡がはいり、父が空港まで迎えにいったとき、会ったことも無いその大叔父さんのことがわかるかなぁと心配していたけど、その大叔父さんゲートから出てきた瞬間、「あ、ハンメや!」って伝わってきたこと。あの感覚は「伝わってくる」としか言い表しようが無かった。

ほんと、世の中、いろんなことが起こるもんです。




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