1/11/2011

報告書『持続可能? 責任ある? GM(遺伝子組み換え)大豆』

掲載:日刊ベリタ 2011年01月06日09時05分掲載 


翻訳: 金克美(KIM Keukmi)/TUP

国際的な科学者のグループは、遺伝子組み換えラウンドアップレディー大豆(訳注、除草剤ラウンドアップに耐える大豆)の栽培とグリホサート除草剤の使用による健康と環境への危険を詳述した報告書を発表した。

報告書『 持続可能? 責任ある? GM大豆』[1]は、アルゼンチン政府の科学者、アンドレス・カラスコ教授[2]による新しい研究に注目した。彼はグリホサートが農業散布で使われるよりもかなり少ない投与でカエルとニワトリ胚の奇形の原因になることを発見している。

「実験室での実験で、妊娠中にグリホサートにさらされた幼児の奇形のケースと一致するデータが得られた」とカラスコ氏は述べた。

ブエノスアイレス医科大学分子発生学研究室のディレクターであり、アルゼンチンの科学技術研究所(CONICET)国民評議会の主任研究員であるカラスコ氏は新しい報告の共著者である。この報告書はGM大豆の栽培によって生活が根本的に破壊されているアルゼンチン村民の証言と共に発表される[3]。

アルゼンチンとパラグアイでは、GM大豆の産地に住んでいる医師や住民がグリホサートの散布により、不妊、死産、流産、癌のみならず、高い出生異常を含む深刻な健康への影響を訴えている。新しいレポートで集められた科学的研究によって、グリホサートに曝されることと、早産、流産、癌、DNAおよび生殖器官の細胞にダメージを与えることとが関連していることが確認された。

アルゼンチンの大豆生産地の住民は、GMラウンドアップレディー大豆の最初の本格的収穫から2年後の2002年から問題を報告し始めたと、カラスコ教授はいう。「私はグリホサートの毒性分類が低すぎることを疑い、……いくつかのケースでは、これは強力な毒になると思われる」と述べた。

住民はまた農作物への被害や小川に散らばる死んだ魚など、グリホサートによる環境被害のケースを報告している。これらの事象はグリホサートが環境に有害であることを示すこの報告書の研究によって裏付けされている。

アルゼンチンのGM大豆農業モデルに反対する科学者や人びとは検閲や嫌がらせ受けている。アムネスティ・インターナショナルは、2010年8月に農村ラ・レオネサで彼の研究の話を聞きに集まった人々を襲った組織的暴力団による暴力的攻撃についての調査を要求している。

「責任ある」大豆?

報告書『 持続可能? 責任ある? GM大豆』は、GM大豆栽培が持続可能であり、除草剤グリホサートが安全だという企業側の主張に挑戦する。「責任ある大豆の円卓会議(RTRS: the Round Table on Responsible Soy)という大豆に関わる他分野の関係者(ステークホルダー)による大豆栽培についてのフォーラムが 2011年に開かれるが、同会議は大豆が人びとと環境に考慮して生産されていると良心的大豆流通業者や消費者を安心させる「責任ある」大豆ラベルを自主的に開始する[4]。つまり、グリフォサート散布した遺伝子組み換え大豆を「責任ある大豆」としてラベル表示するというのだ[5]。

RTRSメンバーにはADM、ブンゲ、カーギル、モンサント、シンジェンタ、シェル、BP社などの多国籍企業と、WWFとSolidaridadなどのNGOが含まれる。

遺伝子組換え食品と作物に反対する運動をしているグループ、GMWatchのクレア・ロビンソンは「グリホサート農業モデルで作られたGM大豆を持続可能で責任のあると呼ぶことは悲惨な茶番劇である」と述べる。

「RTRS基準は、新レポートに示されている遺伝子組み換え大豆とグリホサートの健康への危険から人々を守ることができない脆弱なものです[6][7]。」

「RTRSはまた、GM大豆の単一栽培(モノカルチャー)による深刻な社会問題を無視しています。以前は人びとの食糧を栽培していた土地が、有毒なGM大豆の単一栽培に明け渡され、暮らしと食糧安全保障は失われました。」

「200を超える市民社会組織は、企業のグリーンウォッシュ[訳注:環境保護に配慮するふりをすること]だとしてRTRS基準を非難しています[8]。いまやRTRSの責任あるメンバーがこの信用を失ったRTRS基準を放棄する時です」

ヨーロッパには年間に3800万トンの大豆が動物の飼料として輸入されている[9]。 GMを給餌された動物から作った食品でも、GM食品のラベルをつける必要はない。

EUで大豆に許容されるグリホサートの最大残留基準値は20 mg/kgである。カラスコ教授はその約10倍低い2.03 mg/kgのグリホサートを注入した胚に奇形を発見した[10]。大豆には17mg/kgまでの濃度でグリホサートが残留していることが判明している[11]。

オリジナル英文:



この報告書は英語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、スペイン語、中国語で読むことができる。上記のページからたどることができる。

出典・注
1. Antoniou, M., Brack, P., Carrasco, A., Fagan, J., Habib, M., Kageyama, P., Leifert, C., Nodari, R., Pengue, W. 2010. GM Soy: Sustainable? Responsible? GLS Gemeinschaftsbank and ARGE Gentechnik-frei. Download from:

2. Paganelli, A., Gnazzo, V., Acosta, H., Lopez, S.L., Carrasco, A.E. 2010. Glyphosate-based herbicides produce teratogenic effects on vertebrates by impairing retinoic acid signalling. Chem. Res. Toxicol., August 9.

3. Interviews in English and Spanish and photographs available here:

4. Marks & Spencer. Tackling deforestation.

5. The RTRS Standard can be downloaded from the RTRS website, GM soy is treated the same as non-GM ? see p.i.

6. La Soja Mata (Soy Kills). Against “Responsible” GM soy: reply to Solidaridad, WWF.

7. GM Freeze. Thirteen Reasons Why the Roundtable On Responsible Soy Will Not Provide Responsible or Sustainable Soya Bean Production. May 2010.

8. La Soja Mata (Soy Kills). Statements against the 3rd RoundTable on Responsible Soy.

9. Cert ID. Cert ID Certified ‘Non-GMO’ Soy Meal and Other Soy Products: Volumes Available from South America. Porto Alegre, Brazil, July 14, 2008.

10. FAO. Pesticide residues in food ? 1997: Report. Report of the Joint Meeting of the FAO Panel of Experts on Pesticide Residues in Food and the Environment and the WHO Core Assessment Group on Pesticide Residues. Lyons, France, 22 September ? 1 October 1997.

11. FAO. 2005. Pesticide residues in food ? 2005. Report of the Joint Meeting of the FAO Panel of Experts on Pesticide Residues in Food and the Environment and the WHO Core Assessment Group on Pesticide Residues, Geneva, Switzerland, 20?29 September. FAO Plant Production and Protection Paper 183, 7.
About the authors and publishers of GM Soy: Sustainable? Responsible?

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オリジナル(英文):

GMWatchは英国を本拠にした遺伝子組み換え問題に取り組むNGO

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